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October 24, 2014

『ブルージャスミン』感想

 ついさっきDVDで『ブルージャスミン』を見終わった。ウッディ・アレンは多作すぎてここのところ追っかける気にもならなかったのだが、本作は近年でも図抜けて評判がいいように見えた。で、鑑賞とあいなったが、冒頭から引っ掛かってしまった。

(そろそろネタバレが含まれます)

 飛行機で移動中、ケイト・ブランシェット演じるジャスミンが隣り合わせた老婦人に一方的に話しかける描写がつづく。それだけで不穏なものを感じとれるのに、空港に着いた後、ジャスミンと別れた老婦人が迎えに来た夫に<自分の話だけをずっと喋ってるのよ>みたいなことを告げる場面がご丁寧に挿入されるのだ。ココは遠ざかっていく老婦人が夫に何か話しているがその声は聴こえない、というのが正解の演出だ。
 つまり本作のウッディ・アレンは「説明しすぎ」なのだ。そのためジャスミンの「不穏さ」も、語るに落ちるとでもいうか、「不穏の濃度」が薄まってしまっているのだ。と、いったん感じると全編がそのような描写をされているように思えてしまう。
 イヤ、面白い映画だと思いますよ。ただ「あの」ウッディ・アレンと身構えれば多くを期待してしまうわけで。
 実にわかりやすい映画だ。予告編だけで(ラスト前のあの「意外な事実」以外)、だいたい予想できる。実際その通りに映画はすすんだ。80歳近いウッディ・アレン。この調子ならまだまだ「面白い」映画を作りつづけられるだろう。でもその「描写の気遣い」にかすかな傷が走りはじめてはいないだろうか。

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October 09, 2014

村上春樹はなぜノーベル文学賞を獲れないのか

本日の更新 : 針鼠活字/針鼠銀幕


本日の体重
628
ワハハッ。順調に痩せ細っておるぞ。気分は力石徹だ。ウチの会社に潜んでいるジョーよ、ワタシを殴り殺してみぃ!

 ところで村上春樹である。またもノーベル文学賞を獲れなかった。英国の賭け屋では3年連続オッズが最低だったというのにだ。もっともあそこも信用ならない。今年はともかく昨年は、一昨年に中国作家が受賞したのだから、「地域循環」を重んじるノーベル賞選者たちが、アジアの一角に存する日本の作家を選ぶワケなどなかったのだ。もっとも狡猾なイギリスの予想屋どもは「2年連続アジア作家の受賞」という「サプライズ」までも視野に入れていたかもしれない。
 村上春樹は受賞を拒否している、とワタシは思う。かつてサルトルなどがノーベル文学賞を拒んだが、それは拒否を表明する行為を公にするということ自体が、己の立場(スウェーデンを含むの皇族への拒否感、とか諸々)をあらわすという能動的な行為になるからだ。
 村上春樹は「ただ」受賞したくない。ノーベル文学賞作家ともなれば、マラソンにまつわるエッセイなど気軽に書けなくなってしまうだろう。その他殺到する取材、TV出演要請など、いかにも彼が苦手とするイベントが満載となる。村上春樹はとにかくそれやこれやを避けたいのだ。
 深夜、スウェーデンから村上邸に電話が入る。「あなたが今年度の文学賞に選ばれました」「あ、要らないですから他の作家さんを選んでください」きっとこんな会話が交わされたのだ。ここ数年間(昨年は絶対なかった)か、もしかしたらもっと以前の期間から。
 ノーベル賞は「候補者」というものを事前に公開しないから(文学賞の場合は50年後に公にする。やはり安倍公房はとても近い位置にいたようだ)、上記のような会話も、そういう駆け引きがあったことを隠すことも可能だろう。
 まぁ書くものの質がどんどん落ちてきている村上春樹さんのことだからして、本人の意識はともかく、結果的にはこれでいいのかも知れない。

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