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September 02, 2008

晩夏に人は死にゆく

 昨年の夏のおわりに、仕事で世話になった人が亡くなった。40代だった。告別式の読経のあいだ、外で立つオレの目に空が紺色みたいにあおかったのが、それだけがひときわ印象にのこっている。
 そしてこの晩夏に、友が死んだ。涙はでなかった。なにかひたすらに空虚なもの、むなしい、という思いがオレの胸をいっぱいにした。それと、チクリと刺す悔いの念。彼は永い病をかかえていて、その末の死を死んだ。生前の彼と、もっと深く、友人としての交感ができたのじゃないか。その病床にいる時間をどこか「猶予」ととらえ、度し難いめんどくさがり屋であるオレは、どこか甘えていた。それが、もう戻らないこの時間になって、たとえば「写真や本の話を、本当に心ゆくまでしたい」という欲望が、大きくなっていくのだ。かなわないのに。
 「君の分まで生きる」
 「どこかから、君は見ていてくれる」
 そんな言説が、オレは嫌いだ。おそらく彼も好まないだろう。昨夏に亡くなった知人の葬儀で見た紺色の空。それはオレのなかに染みついている。オレは、キミとのつきあいのなかで様々のものを得た。あの、紺色の空みたいに。キミからもらったものをなにかのカタチにしてゆく。もはや不可能な「交感」に替わることは、それだけだ、といまオレは思っている。
 キミは病に苦しんだ。ながく、苦しんだ。いまその苦しみから解放され、キミは安定した虚無のなかにいる。そのことに、己の悔いを噛みながらも、オレはほっとしている。

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