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November 06, 2004

痛風物語_2

◆ いよいよ栄の街を、風俗を求めて歩く。酒が入っているのでわりと平静な気持で看板などを見てゆくことができる。
◆ 夕食前に地下街の本屋でそのテの情報誌をめくってみたが、栄にはどうもソープランドは少ないようである。皆、金津園にいくのか。けれどワタシはなにかイヤラシイことがしたいわけではない。芸術のために一肌脱いでくれる女性がそこにいればいいのだ。したがって何も料金の高いソープランドに固執することはない。
◆ 栄のその界隈にはファッションヘルスが無数にあった。店の選択に迷う。しばしウロウロと歩くと突然「人妻ヘルス」の文字が目にとびこんできた。夫はリストラで職探しの毎日。貯金を食いつぶしてゆく日々。娘には新しい洋服のひとつも買ってやれない。私が働くしかないけど、スーパーのレジのパートではもらえる金はタカが知れてる。やっぱり効率のいい風俗かしら。夫のことは愛してるけど、ヘルスなら、男の人に身をまかせるわけではない。団地の隣の奥さんは援交してる。アレにくらべたらずっとマシ・・ そんな事情を抱えた人妻たちが、いま目の前にあるビルのなかに何人もいるということか。そしてワタシをむかえてくれるというのか。
◆ ワタシは即決し、そのビルに入ろうとしたところでハッと我にかえった。うどんだ。うどんがない。幸い程遠くないところにコンビニの明かりが見える。ワタシはそこで「どん兵衛」1ヶを求め、再び「人妻ヘルス」にとって返した。
◆ 個室に案内してくれた女性は人妻というにはあまりに若く、「娘」という印象であった。年をたずねると19だという。
「へぇ、19でもう結婚してるんだ?」
すると娘の目が哀調を帯びていき、ごめんなさいと言った。
「あたし、まだ独身なの」
ワタシは混乱した。ここは「人妻ヘルス」ではないのか。あ、もしかすると「人妻が経営するヘルス」ってことかな? ま、いずれにせよワタシはイヤラシイことをしにきたわけではないのだから、人妻であろうとなかろうと、そんなことには拘泥しない。ワタシの芸術に理解を示してくれる女性でさえあれば。そう、実はそこが問題なのである。これから彼女に依頼する、常識からすれば奇妙な内容に、娘は拒絶反応を起こすのではないか。そうしたら元も子もない。
◆ しばしの絶句から回復したワタシは、アタマをめまぐるしく回転させた。いきなり今回のメインテーマを提示しても理解してもらえないだろう。まずは世間話から入って、ワタシが芸術家であることを説明しよう。しかるのちに写真撮影のお願いをしよう。娘はまだ不安そうな目でワタシの顔を覗きこんでいる。
「ふーん、ま、いいさ、キミ可愛いし」
「あ! どん兵衛だ。お客さん、夜食ですか?」
娘の顔からはもう哀調など掃われており、すっかり「風俗嬢」へともどってワタシの背広をハンガーに掛けたりしている。それにしてもしくじった。コンビニの薄い袋を透かして「どん兵衛」のふたが見えてしまっている。いまうどんに関してあいまいなことを言っては、本来の依頼をする際、説明が難しくなる。そう判断したワタシは迂回をやめ、直裁に芸術写真への協力要請を申しでることにした。
「ねぇ、ヘンな奴だと思われるとこまるんだけどー・・」
「うん?」
◆ つづく(hedge)

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