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『カンバセイション・ピース』 保坂和志

小説とはなにか(1) [2004/02/15]

 この度の芥川賞は若い娘二人が獲ったということで久々話題になっており、作品の出来に対しても賛否両論で誠に喧しいが、その中身が「いい」「悪い」に終始しており、そもそもあの二作が芥川賞作品としてふさわしいか、といった議論はとんと聞かない。以前は盛んに論じられたもので、つまりは「純文学」「大衆文学」と称せられる区分けの問題であり、前者が芥川賞、後者が直木賞と一応の規定らしきものはあるのだが、ある者が文学上そんな垣根は存在しないと言い張ればいやいや確かに両者には質的な違いが存在すると断言する人もおり、侃々諤々たるものであった。今やそのような主題は時代遅れなのか、受賞者の容姿が人々のもっぱらの関心事のようである。そんな風潮への反発もあって、わたしはこの純文学・大衆文学問題にこだわってみたくなった。
 そもそも「純文学」「大衆文学」という呼称が適確なものでなく混乱の元となっている。私見を申せば、芥川賞には小説を候補とし直木賞には「物語」を充てればよい。では直木賞を得る作品は小説ではないのかと問われればそのとおりであると私は答える。その人はさらに重ねて問うであろう。小説と物語の違いはなにか、と。私の返事は「例えば『カンバセイション・ピース』が小説である」というのも選択肢であろう。(つづく)

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