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『自分と自分以外 戦後60年と今』 片岡義男

『スローなブギにしてくれ』トラウマ [2004/11/15]


 「大統領は再選されるか」で、ブッシュが勝つと断言しているので、ちょっとはらはらしたけど、そのとおりになって、まあよかった。ここでハズレてたら格好がつかない。片岡義男というヒトにはまったく似合わない事態になってしまう。こういう断言をしてしまうのも片岡義男だし、ハズレたら格好悪いのも片岡義男だ。そのことがすごく納得できる。
 巻末にある写真が気になった。ハンサムだけど、髪形がちょっと妙だ。でも彼のこだわりの、結果としての髪型なんだろうなということは判る。この写真は、片岡義男という人物をよくあらわしている。著者紹介にふさわしい写真だ。
 なんらかの理由で、片岡義男とサシで話すことになってしまったらと怯える。いまいちばんサシで話したくない相手だ。話題に詰まるというよりは、どう話せばいいのか、ということに迷うのではないか。あるテーマに対してどんな意見を持っていても(彼の意見に対抗するような内容でも)、片岡義男は許してくれると思う。ただ、その意見をどのように語るか、というところを彼はじっと観察するだろう。そしてその語り口を気にいらないと判断したとたん、彼の視線は喫茶店の窓の外へとむけられてしまい、もう2度とこちらを見ることはないだろう。もちろん以後こちらが何を言おうとまったく聞いていないのだ。
 経済とか会社をめぐる問題への言及が多いのは、日経新聞での連載だから、という理由だけではないと感じた。読んでないのだけれど、彼の初期短篇に『給料日』というサラリーマンものがあるらしい。が、彼の経歴に会社勤めの形跡は見当たらない。なのにえらそうなことを書かないでくれ、とサシで話すなら酒を入れてそこらへんを攻撃するか。実際この本での経済や会社をめぐる文章は、図式的に過ぎる部分がある。どこか硬い。そして目についた他の特徴として、「大衆」への批判が頻出する、ということがある。こうなると導き出される答えはひとつだ。片岡義男は「会社人」にたいしてコンプレックスを抱いている。

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